2011年首都圏高校生集会Ⅱ~教育費無償化大討論集会~報告
2011年7月23日・「お金がないと学校に行けないの?」首都圏高校生集会Ⅱ
~「教育費無償化は必要か」大討論集会~まとめ
「お金がないと学校に行けないの?」首都圏高校生集会実行委員会
1 当日の参加状況
当日の集会参加者は、高校生30名(私立2・全日制9・夜間定時19)、一般参加者(引率教員含む)30名でした。皆様の参加の呼びかけや出席に大変感謝いたします。
2 集会の目的
高校生自身が現在の「教育費」の実態に関心を持ち、また自分たち自身が自分たちの「学び-教育」を保障するにどうしたらよいか、考え・意見を表明し・訴え・実現のために行動を起こす必要があります。今回は「自分たちの考えをしっかり表明する場」を設定しました。
3 集会の内容
集会は次の内容で行われました
(1)口頭劇:「お金がないと学校に行けない!」~学費を巡るあるクラスでの意見交換~
(2)「無償化になったけどアンケート調査結果」スライド報告
(3)「どこまで無償化が許されるか」~高校生のディスカッション
(4)「お金がないと学校に行けないの?」首都圏高校生集会実行委員会アピール
4 高校生の討論テーマ
高校生が論議したテーマは次の4点です。約2時間をあてました。
(1)授業料無償化-授業料不徴収になったけど、実態はどうなのか
(2)補助教材(教科書および図書費)の無償化はどこまで必要か
(3)部活動費・遠足修学旅行費・通学費・資格検定費の無償化はどこまで許されるか
(4)奨学金は給付型にすべきか、それとも貸与型か
(5)自由討論(時間がなく数人の意見発表となった)
5 集会の意義
当日の運営は、スタッフの高校生が運営し、参加した高校生は、自主的に討論に参加しました。①グループ討議と全体討議で活発な意見交換がされた。②討論の中で、一般参加者から的確なアドバイスを受けることができた。
6 高校生討論の限界と専門家の適切なアドバイスや意見の必要性
しかし、高校生討論の限界を理解しておくことも大切です。高校生は日常的に「実態」として教育費の負担感を理解していても、教育費の無償化の必要性やその意味や現在の社会的背景などについて、十分研究理解し参加しているわけではありません。従って、論議の方向が「目指す目的」と離れてしまうことは考えられます。これは高校生が討論する上での「限界」です。それを克服するには、「他人の意見を聞いて、自分の意見と比較すること」「他人の意見の根拠や理由に耳を傾けること」がまず必要でが、研究者や様々な分野で活動されている専門家のアドバイスや意見が必要になります。今回は討論の中で上手にこれらの一般参加者から、適切なアドバイスや意見がありました。
7 討論の中で浮き彫りにされた事
次に、各テーマごとの討論後、発表された意見をいくつか紹介します。
(1)「授業料無償化-授業料不徴収になったけど、実態はどうなのか」について(に関して)
①現在支払っている、様々な経費に関して、「無駄」と思われる経費はなくすべき。特に「お金の使い方」は不透明。詳細を明にしてほしい
②授業料無償化によって助かっている。続けてほしい。もし、定時制生徒が全日制と同じ金額の授業料が無償化として支給されたら、その差額約7万円の使い道は多い。
③グラフをみたとき(授業料無償化になったが、「変わらない」「困っている」が存在)、 やっぱり、困っている人がいる。この人たちを見ておかねばならないと思った。
④定時制は授業料や諸経費は事務室に直接納入する。全日制は銀行振り込み。これが定時制生徒と全日制生徒の学費等の意識の違いになっている。
⑤定時制では、生活費や学費納入のために「仕事を4カ所掛け持ち」している人がいる。
※(一般参加から)全日制生徒でも「学費」などで苦労している。むしろ「相談できない環境がある」。これはつらいのではないか。無理が重なって、体が疲れて学校に行けない。
(2)(3)「(2)補助教材(教科書および図書費)の無償化はどこまで必要か・(3)部活動費・遠足修学旅行費・通学費・資格検定費の無償化はどこまで許されるか」について
①定時制は図書室を使う機会がない。公費としての図書費予算はどうなっているのか
②道具やユニフォームなど、お金がかかる部活はあきらめる。大きな大会参加については交通費など負担してもらいたい。道具はそろえてほしい。
③教科書など、みんなが使用するもの授業に必要なものは無償であってもよい。個人的にバラツキがあるものは自己負担でよい。
④定時制でも、職業科などは教科書が高価なものがあり、教科書代は年間1万円程度になる。「教科書代」により選択教科を選ぶ人も多くはないがいる。「選択」の幅を広げる意味でも無償であってよい。
⑤入学時には「初年度学校納付金」として「学校生活で必要な諸経費や修学旅行や遠足の一部」を一括して集める。ところが埼玉県の定時制では2年前まで教科書補助が公費で支給されていたが打ち切られてしまった。また教科書代を納入しない生徒が増えた。このため、「初年度学校納付金」から教科書代を支払うケースが生まれた。こうして修学旅行や遠足の費用が少なくなり、「近場」や「取りやめ」という事態がうまれた。また、 「初年度学校納付金」を増額するようになった。気持ちとしては修学旅行に行きたい。
⑥検定料について、「単位認定」ならば無償にしてほしい。また英検や漢検など、どんな職業でも共通で、また全員受けるならば無償であってもよい。また「不合格」は個人半額負担、「合格」は全額無償というシステムがあってもよい。
※(一般参加から)高校にも、小中にある「就学援助制度」があってもよい。また部活動費や修学旅行の内容、授業に必要な備品など、保護者や生徒に相談し論議する場があってもよい。また不透明な使い方についてもチェックする必要がある。
(4)(5)「(4)奨学金は給付型にすべきか、それとも貸与型か・ (5)自由討論(時間がなく数人の意見発表となった)」について
①貸与型は借金だから望ましくない。給付型はやはり「(成績など)責任をとる」ような形が必要かもしれない。ある程度の成績で給付型がもらえると…これだと頑張れる。
②自分の夢のために、私大を。奨学金は自分が背負えば。借金してでも自分のやりたいことをやる。
③私学に行こうとしたが、家庭の事情で定時制に入学した。給付型奨学金があれば、自分の希望がかなえられたと思う。
※(一般参加から)給付型に「成績」がついてよいのだろうか。これだと、勉強できる生徒だけ、つまり勉強のできる環境の整っている生徒だけが奨学金を受け取ることになる。 「成績条件」だと、アルバイトなどをしなければ学費を払えない生徒たちに対して問題はないだろうか。やはり「学ぶ権利」を基礎に考えていかねば…。
※(一般参加から)現在、経済的に恵まれない子供たちの学習を支援している。その子たちは頑張っているのに、一人一人個人差が出てしまう。成績基準では一人一人を見ることにならないし、判断するのは難しい。やはり、誰でも給付型が望ましいのでは。
8 高校生の感想(代表的な感想)
■今日は、色々な県の高校生と友達になれたし、とても楽しかったです。色々な学校の意見を聞けて、お金の問題を考えさせられました。授業料無償化が高校生が動いて変わった事を、私は、この会で初めて聞きました。高校生が働けば変わる事って、たくさんあるのですね。
■他校の意見がたくさん聞けてとても貴重で充実した時間を過ごせたなぁと思いました。また個人個人いろいろな環境の中で生活していることやその中での思いなどたくさんの意見が出てきて、みんなこんなことを思っているんだなということがよくわかった気がします。またこの討論会を通じて他校の生徒と交流できたんじゃないかなんて感じることもできました。こういう会はとっても大切だと思います。なので、またこの討論会があれば是非参加したいです。
9 今後の活動
今までの活動を基礎に、高校生(もちろん卒業生も含めて)のネットワークを広げ、「教育の無償下」に向けて、論議を重ね、要望をまとめ、その実現のための活動をすすめていきます。当面、アピール文に掲げた、「中等・高等教育無償化の漸進的導入を規定した国際人権A規約13条2項(b)(c)の留保撤回と批准」「教科書代の無償化」「給付制奨学金制度を創設」に向けて活動を進めていきます。
このページにある資料は集会当日に会場で配布、また使用した資料です。
各学校などでの討論などにご活用ください。
なお、ご使用になられた場合には感想やご意見などをいただけたらとてもうれしく思います。
たわいもない会話をしながら学費の問題をつぶやく生徒…
会場で多くの大人の方が感動した劇です。
授業料無償化になったけどアンケート
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